はじめに
リハビリの仕事に興味をもったみなさんが最初にぶつかる壁のひとつが「理学療法士」と「作業療法士」の違いではないでしょうか。
この記事では、作業療法士歴8年目の筆者が、「理学療法士」と「作業療法士」の違いに触れながら、「作業療法士」を選ぶメリットとデメリットに着目して解説していきたいと思います。
デメリット
専門性がわかりにくい
作業療法士は理学療法士と比較し専門性がわかりにくいです。
理学療法士の定義を日本作業療法士協会のホームページで確認すると以下のようになっています。
理学療法士を一言でいうならば動作の専門家です。寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩くなどの日常生活を行う上で基本となる動作の改善を目指します。関節 可動域の拡大、筋力強化、麻痺の回復、痛みの軽減など運動機能に直接働きかける治療法から、動作練習、歩行練習などの能力向上を目指す治療法まで、動作改 善に必要な技術を用いて、日常生活の自立を目指します。
日本理学療法士協会ホームページより
公式ホームページを見ると以上のように非常にスッキリとわかりやすい定義となっております。
一方作業療法士はどうでしょうか。
作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。
(註釈)
・作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる。
・作業療法の対象となる人々とは、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団を指す。
・作業には、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる。
・作業には、人々ができるようになりたいこと、できる必要があること、できることが期待されていることなど、個別的な目的や価値が含まれる。
・作業に焦点を当てた実践には、心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と、その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用、およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれる。日本作業療法士協会ホームページより
この定義を一度読んだだけではすぐにはわかりにくいと思います。
その「わかりにくさ」により専門性がわかりにくくなり、職業選択の際に苦労する要因の一つだと思います。
「作業療法」では、普段の生活に必要な動作ひとつひとつすべてを「作業」と呼び、病気や怪我などでそれができなくなった際に、それらがまた再びできるように実際の動作の練習をしたり、それに必要な筋力や関節可動域訓練を行います。それらの機能向上のために、折り紙や手芸など、様々なアクティビティを手段にすることがあるのも特徴ではないでしょうか。
作業療法士は一般的な整形外科やリハビリ病院に加え、精神科にもおり、活動を通じて精神面のリハビリや生活リズムの向上などを図ることもありますし、小児領域で、発達や言葉が遅れた子どもさんに対してリハビリを行うこともあります。
領域が広いからこそわかりにくさもあります。
理学療法士のような業務も多くそれで悩む作業療法士も
実際に働き始めると、学校で習った作業療法とギャップを感じる人も少なくありません。
学校では解剖や生理学など体のことに加え、腕や手に対するリハビリの方法や、活動を用いたリハビリの方法などを習います。
しかし、リハビリ病院などに就職し、足や腰の骨折の患者さんを担当すると、理学療法士とともに足のリハビリや歩行訓練をすることを求められます。
そのため、「思ってたのと違う」と感じる作業療法士も多いと思います。
メリット
職域が広い
作業療法士の働く場所は、一般的な病院やクリニックだけでなく、精神科や小児領域もあり、理学療法士と比較するとやや職域の幅があります。
心理面にも着目して介入できる
理学療法士や作業療法士は心理学も勉強しますが、作業療法士はより患者さんの思いに着目する職種です。リハビリの目標を決める際も、その目標が患者さんにとってどのような意味があるのかを深堀りします。無理そうな目標でも、自助具などのアイデアグッズを使って目標達成することもあります。
工作で患者さんを治療できる
手の治療をするために折り紙などのアクティビティを行うことがあります。また、寝たきりの患者さんの体力を少しでも上げるために座る練習や立つ練習をすることがありますが、ただ立つだけ、座るだけだと退屈になってしまいます。そのため、その患者さんに合わせた工作や塗り絵などの活動を取り入れることもあります。
生活により密着した職種
作業療法士は、トイレ、手洗い、洗顔、歯磨き、家事や仕事などなど、生活に関する動作の練習もします。実際の生活動作場面で動作の練習をしたり、仕事でパソコンの練習をしたり。必要に応じて、病院でも調理訓練といって、リハビリ室のキッチンで料理を患者さんと作ることもあります。
そのような生活に密着したリハビリをするのは作業療法士の特徴の一つなので、そういう部分に魅力を感じるのであれば作業療法士を目指すこともおすすめです。
まとめ
この記事では、「理学療法士」と比較して「作業療法士」になるメリット・デメリットについて解説してみました。どんな仕事も大変なことがつきものです。そんな中でも自分に合う職業、好きな職業を選ぶことで、楽しく働くことができたり、仕事で結果を出しやすくなると思います。
リハビリの仕事に興味をもって、「理学療法士」「作業療法士」のどちらになるかを考えるときは、仕事内容をしっかり理解し、自分が好きだな、自分に合いそうだなと感じる方を選ぶようにしましょう。
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